西條鶴酒造(広島県東広島市)
酒蔵の魅力と実績
「西條鶴酒造」は、酒どころ・広島県東広島市西条に位置し、全国的にも有名な「西条酒蔵通り」に蔵を構える老舗の酒蔵です。明治37年(1904年)の創業以来、伝統を守りながらも挑戦的な酒造りに取り組んでおり、近年はクラシカルな特定名称酒から革新的な無濾過生原酒まで、多彩な酒質で注目を集めています。
特に地元広島の米と水にこだわり抜き、小仕込みで丁寧に醸される酒は「芯の通った旨さ」と称され、地元を中心に根強いファンを持ちます。全国新酒鑑評会でも高評価を受けるなど、実力派の蔵元として知られています。
歴史と立地の特徴
西條鶴酒造は、かつて「賀茂鶴」「亀齢」「白牡丹」など名だたる銘醸蔵がひしめく西条において、職人気質を大切にした少量生産にこだわってきました。蔵は酒蔵通りの中心に位置し、白壁の蔵や赤瓦の屋根が連なる歴史的街並みの一部を成しています。
独自の酒造りへのこだわり
設備・製法・哲学
伝統的な槽(ふね)搾りや木製道具を一部活用しながらも、現代的な温度管理を併用。全量純米仕込みを目指し、酒米や水、酵母の選定にも一切の妥協をしません。特に自社精米や手作業での洗米・浸漬工程に時間をかけることで、米の持ち味を最大限に引き出しています。
プレミアム日本酒の展開
銘柄①:「西條鶴 純米大吟醸 備前雄町40」
- 受賞歴:令和5年 広島国税局清酒鑑評会 優等賞受賞
- テイスティングコメント:完熟メロンや洋梨のような芳醇な香り。滑らかな舌触りと膨らみのある甘旨味が口中に広がり、後半にはやや辛口のキレがバランスを取る。
- ペアリング:広島産牡蠣の昆布焼き、または地元の賀茂茄子の田楽。旨みと甘みが重なり、食材の持ち味を昇華。
銘柄②:「西條鶴 純米吟醸 無濾過生原酒」
- テイスティングコメント:バナナや炊きたての米の香りが立ち上がる。生原酒らしい力強い旨味とほのかな酸味、しっかりとした余韻。
- ペアリング:穴子の白焼きに藻塩。酒の厚みが、白焼きの脂と絶妙に絡み合う。
銘柄③:「西條鶴 Kuramoto Classic 山廃純米」
- テイスティングコメント:熟成感のあるナッツ香、酸と旨味が共存する骨太な味わい。燗にすることでより輪郭が明瞭に。
- ペアリング:広島県産黒毛和牛のしぐれ煮、または「ちしゃもみ」(広島の郷土料理)。伝統×伝統のマリアージュ。
レギュラー日本酒の展開
銘柄一覧と特徴:
- 西條鶴 特別純米
- 香り控えめで食中に寄り添うタイプ。米のふくよかさが穏やかに広がる。
- ペアリング:瀬戸内の小魚南蛮漬け、広島菜のおひたし。
- 西條鶴 純米酒 にごり
- 甘酸っぱさと微発泡の爽快感。デザート感覚でも楽しめる。
- ペアリング:柑橘を効かせた揚げ鶏、または柚子大根。
- 西條鶴 本醸造 超辛口
- すっきりドライで喉越し重視。冷酒でも燗でも映える。
- ペアリング:あなごめし(冷でも温でも)、焼きししゃも。
- 西條鶴 純米吟醸 備前雄町
- バランスが良く、やや甘旨口。日常に寄り添う一本。
- ペアリング:筍の土佐煮、だし巻き卵。
- 西條鶴 蔵囲い(熟成酒)
- 低温熟成によるまろやかな舌触り。旨みの層が深い。
- ペアリング:広島風お好み焼き(豚玉)と合わせる意外性も。
原料と味の傾向
- 使用酒米:備前雄町、八反錦、千本錦、こいおまちなど、広島県産米中心。
- 味の傾向:旨みを軸にしたふくよかさ、キレの良さ。辛口〜中口が多く、食中向き。
- 仕込み水:西条の軟水系地下水(賀茂台地の伏流水)を使用。
- 酵母:熊本酵母、広島吟醸酵母など、香りと味のバランスを重視して選定。
地元農家・地域との連携
- 地元農家と契約栽培の「雄町」や「八反錦」を使用。
- 西条酒まつりや蔵開きなど地元イベントにも積極参加。
- 蔵見学時には地域の特産品紹介ブースも併設(例:賀茂鶴と共催イベントなど)。
飲食店・施設とのコラボ
- 毎年10月開催の「酒まつり」では、近隣飲食店と特別ペアリングメニューを提供。
- 「広島そごう」「福屋 八丁堀本店」など百貨店催事にも出店。
- 2024年秋には広島市内レストランとの“西條鶴マリアージュナイト”を開催。
酒蔵の風景と訪問情報
- 見学:事前予約制で見学可(仕込み期を除く)。英語対応は要問合せ。
- 直売所:併設の販売コーナーあり。限定酒の取り扱いも。
- 見どころ:煙突を残した歴史ある蔵造り、酒林の飾られた入り口、風情ある通り。
アクセス情報
- 住所:〒739-0011 広島県東広島市西条本町9-17
- 最寄駅:JR西条駅から徒歩約10分(西条酒蔵通り沿い)
- 車アクセス:山陽自動車道「西条IC」より約10分
- 最寄空港:広島空港から車で約30分
まとめ
西條鶴酒造は、規模の大きい蔵が並ぶ西条の中にありながら、あえて“少量・丁寧・職人手造り”を貫く誠実な蔵元。伝統を大切にしながらも現代の味覚に寄り添った酒造りを実践しており、訪問者にはその真摯な酒造りの姿勢がじんわりと伝わります。街歩きと共に、ぜひ立ち寄ってほしい一軒です。