| 滋賀県甲賀市
酒蔵の魅力と実績
酒蔵の歴史、立地の特徴
美冨久酒造は、大正7年(1918年)創業の歴史ある酒蔵で、滋賀県甲賀市水口町に蔵を構えます。甲賀流忍者の里としても知られるこの地は、鈴鹿山系からの豊かな伏流水と、米どころ滋賀の肥沃な土壌に恵まれており、酒造りに理想的な環境が整っています。
「美しく冨(とみ)ある久しき酒」を願って命名された「美冨久」は、三兄弟がそれぞれ「美」「冨」「久」を受け継ぎ、家族経営ながらも革新を続ける蔵です。伝統を守りつつも新しい挑戦に積極的で、酒造りの現場では木槽しぼりや生酛造りなど、昔ながらの技を今に伝えています。
独自の酒造りへのこだわり
美冨久酒造は「三兄弟三様」をモットーに、異なる発想や感性を持つ兄弟たちが、互いに刺激を与え合いながら酒造りを進めています。蔵では今も木槽による「槽搾り(ふねしぼり)」を用い、手間を惜しまず、時間をかけた酒造りを実践。酵母は協会系酵母を中心に、香りと味のバランスを重視した設計を行っています。
また、地元産酒米の積極的な活用や、酒粕の地域循環利用など、サステナブルな酒造りにも取り組んでいます。
プレミアム日本酒の展開(3銘柄)
1. 美冨久 純米大吟醸 原酒 三連星
- テイスティングコメント
フルーティーな香りの中に落ち着いた吟醸香が重なり、口に含むと蜜のような甘やかさと繊細な酸が広がります。口当たりは滑らかで、フィニッシュはキレよく清々しい印象。 - ペアリング提案
甲賀の名産「信楽たぬき豆腐の白味噌グラタン」と。大豆のコクと酒の芳醇な甘みが調和し、酒の酸味が後味を引き締めます。 - 受賞歴
全国新酒鑑評会 入賞酒、IWC(International Wine Challenge)SAKE部門シルバーメダル受賞
2. 三連星 純米吟醸 直汲み 無濾過生原酒
- テイスティングコメント
発酵中のガスを閉じ込めたフレッシュな口当たり。パインや青リンゴを思わせる香りに、生酒ならではの躍動感が弾けます。余韻にはほどよいビター感。 - ペアリング提案
近江牛のユッケ風タルタル(塩・ごま油仕立て)と。肉の甘みと酒のガス感が好相性で、油をリセットしてくれます。 - 受賞歴
SAKE COMPETITION 純米吟醸部門 上位入賞
3. 美冨久 生酛純米 無濾過原酒
- テイスティングコメント
しっかりとしたコクと旨味、米の厚みが感じられる重厚なタイプ。生酛らしい乳酸の酸味とともに、じわじわと伸びる余韻が魅力。 - ペアリング提案
甲賀名産「鈴鹿山麓の鹿肉ロースト 山椒ソースがけ」と。ジビエの濃厚な旨味と、生酛の骨格ある味わいがしっかりマリアージュ。 - 受賞歴
全国燗酒コンテスト 金賞
レギュラー日本酒の展開(5銘柄)
- 美冨久 特別純米
- 美冨久 本醸造 辛口
- 三連星 特別純米
- 三連星 純米酒
- 美冨久 にごり酒
いずれも地元滋賀県内を中心に根強いファンを持ち、季節限定酒や直売限定品も含め多様なラインナップを展開しています。
地域原料を活かした酒造り
使用している酒米・味の傾向
酒米には主に「滋賀渡船」「吟吹雪」「山田錦」「玉栄」などを使用。地元農家と提携し、減農薬での栽培を支援しています。味わいは全体的に「米の旨味」がしっかりと感じられる設計で、淡麗すぎず、食と寄り添う味が多いのが特徴。
仕込み水・酵母
鈴鹿山系の伏流水を仕込み水に使用。中硬水で、旨味と透明感を両立させた酒質づくりに貢献しています。酵母は協会9号や14号を主に使用し、香りと味のバランスを重視。
地元農家・地域との連携
甲賀市の若手農家との連携で、酒米だけでなく酒粕や糠を活用した循環型農業の実践や、地域イベントでの利き酒講座の開催など、地域共生の意識が高い蔵です。
地元との連携・イベント事例
- 「蔵まつり」(毎年春開催)
酒蔵開放、試飲、音楽ライブ、地元飲食店ブースの出店など - 「三連星ナイト」(不定期開催)
若手蔵元が直接参加するペアリングディナー形式のイベント。近江の食材とのマリアージュを体験 - 信楽焼×酒イベント
信楽焼の器とのコラボで、酒器による味わいの違い体験ワークショップ
酒蔵の風景と訪問情報
見学の可否・直売所の有無
- 酒蔵見学:要予約(仕込み時期を除く)
- 直売所:有(限定酒販売、試飲可)
見どころ
築100年を超える木造蔵の梁、槽場の木槽、手書きのラベル室など、職人技と温もりを感じられる空間が魅力。フォトジェニックな「三連星」の壁画も人気。
アクセス情報
- 住所:滋賀県甲賀市水口町西林口3-2
- 最寄駅:近江鉄道「水口城南駅」より徒歩約10分
- 車:新名神「甲南IC」より約15分
- 空港から:関西国際空港より車で約1時間45分
まとめ
美冨久酒造は、家族の絆と地域の絆を大切にしながら、昔ながらの手仕事にこだわる「人の温もりが宿る酒蔵」です。三兄弟がそれぞれの視点から酒造りをリードし、革新と伝統のバランスが見事に保たれています。
「飲んで楽しく、語って深まる」日本酒を提供し続けるその姿勢は、これからの地方酒蔵のモデルとも言える存在。信楽、甲賀という土地の文化と酒を結び付ける試みは、今後さらに注目されることでしょう。