(滋賀県長浜市)|戦国の記憶を継ぐ、地酒の矜持

酒蔵の魅力と実績

歴史と立地の特徴

冨田酒造は、戦国の歴史が息づく滋賀県長浜市木之本町にある、天文年間(1550年代頃)創業の老舗酒蔵です。現蔵元で15代目を数える長い歴史を持ち、浅井家に仕えた「七本槍」の名を冠した銘柄で知られています。

湖北の木之本は、伊吹山地と琵琶湖の間に位置し、冷涼で湿潤な気候、鈴鹿山系の伏流水という酒造りに適した自然条件が整っています。また、北国街道の宿場町として栄えたこの地域は、古くから人と物の往来があり、文化の交差点としても発展してきました。

独自の酒造りへのこだわり

冨田酒造の哲学は「地域密着・全量純米・米を活かす造り」にあります。特に地元産米への強いこだわりが特徴で、滋賀県内での契約栽培米を中心に、精米歩合を下げすぎず米の旨味を残す設計がなされています。

仕込みは冷却能力を活かした低温長期発酵。蔵内には木桶やホーロータンクも活用され、伝統的な技術と現代的な管理のバランスが取れています。また、7号酵母や自家採取酵母を活かし、酸味や骨格を大切にした酒質設計を行っています。


プレミアム日本酒の展開と受賞歴

1. 七本槍 木桶仕込み 生酛純米

  • テイスティングコメント
    ナッツやスパイスを思わせる香り。骨太な酸と旨味が複雑に絡み合う。ぬる燗〜熱燗で真価を発揮。
  • ペアリング
    地元名物・日野菜のぬか漬けと焼きサバ寿司。発酵同士の調和と、魚の脂に生酛の酸が寄り添う。
  • 受賞歴
    2021年「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」プレミアム部門金賞

2. 七本槍 玉栄 純米大吟醸

  • テイスティングコメント
    青竹のようなすがすがしい香りと透明感ある味わい。ほのかな甘みと玉栄由来の芯のあるコク。
  • ペアリング
    近江牛の炙り寿司。脂の甘味と酒のキレが美しく交差。
  • 受賞歴
    IWC(International Wine Challenge)SAKE部門出品、評価高

3. 七本槍 渡船 純米吟醸

  • テイスティングコメント
    熟した果実の香りに、ミネラル感と透明な旨味。滋賀発祥の「渡船」らしい張りのある味。
  • ペアリング
    琵琶湖産モロコの天ぷら。香ばしさと酒の余韻が響き合う。
  • 受賞歴
    Kura Master純米酒部門 プラチナ賞(2022)

レギュラー日本酒の展開と受賞歴

1. 七本槍 純米 玉栄

  • 落ち着いた香りと米の旨味をストレートに感じられる酒。常温〜燗向け。
  • ペアリング:近江こんにゃくと鶏そぼろの炊き合わせ

2. 七本槍 純米 渡船

  • 滋賀原産の復活米「渡船」を活かした、深みのある味わい。
  • ペアリング:鮒ずし入りリゾット(創作)

3. 七本槍 活性にごり酒

  • きめ細かい泡とフレッシュな酸味。スパークリング代替にも。
  • ペアリング:木之本かまぼことからし蓮根(発酵つながり)

4. 七本槍 純米吟醸 山田錦

  • エレガントな香りと滑らかな口当たり。冷酒向け。
  • ペアリング:近江地鶏の低温調理 柚子塩添え

5. 七本槍 直汲み生原酒

  • ガス感とピュアな旨味。しぼりたてならではのエネルギー。
  • ペアリング:近江牛のレバーとクレソンのソテー

地域原料を活かした酒造り

冨田酒造では、滋賀県産「玉栄」「渡船」「山田錦」などを使用。特に玉栄は、骨太な旨味を持ち、冨田酒造のスタイルに合致。渡船は、近江の復刻米として象徴的存在です。

仕込み水は鈴鹿山系の中硬水で、すっきりとした中にコシを持つ味わいを育みます。酵母は協会7号を基本としながら、酒米や季節に応じて設計を変えています。

地元農家と「酒米作り勉強会」などを開催し、酒蔵と農業の橋渡し的存在としても活動中です。


地元との連携・イベント事例

  • 蔵開き「七本槍まつり」(毎年2月)
    新酒の披露、限定酒の頒布、地元飲食店による特別メニューの販売。
  • 発酵サミットin滋賀(年1回)
    滋賀県内の味噌・醤油・鮒ずし業者と共同開催。冨田酒造のペアリング提案も多数。
  • 「七本槍と近江牛」ペアリングディナー(レストランじゅらく亭、2023年秋開催)

酒蔵の風景と訪問情報

  • 見学:事前予約制にて受付(冬期限定)
  • 直売所:あり。限定品や蔵元限定酒を販売
  • 建物の見どころ:江戸中期の主屋、明治時代の酒蔵。しっとりした白壁と重厚な梁が美しい
  • アクセス情報
    • 住所:〒529-0425 滋賀県長浜市木之本町木之本1107
    • 最寄駅:JR北陸本線 木ノ本駅 徒歩7分
    • 車:北陸自動車道 木之本ICより5分
    • 空港:中部国際空港から2時間(米原経由)

まとめ

冨田酒造は、地域に根ざしながらも、時代に応じてしなやかに進化する「土地の酒」の理想形です。米・水・人を活かし、骨太な酸と深みを持つ酒は、まさに現代の和食や発酵文化との相性抜群。地元との結びつきを大切にする姿勢と、継続的な品質向上への挑戦が、今後も冨田酒造を牽引していくでしょう。