寒梅酒造(宮城県大崎市)
酒蔵の魅力と実績
宮城県大崎市、かつて「奥州街道」の要所として栄えた地に蔵を構える寒梅酒造は、明治時代から続く老舗蔵元です。代表銘柄「宮寒梅(みやかんばい)」は、「すべては一杯の幸せのために」という蔵の理念を体現し、料理に寄り添うやさしい酒質で全国の食通や料理人から高い支持を得ています。国内外のコンテストでの受賞歴も多数。近年では若き6代目・岩﨑健弥氏のもと、品質第一主義を貫きながらも現代的な感性を取り入れ、宮城を代表する蔵の一つへと躍進しています。
酒蔵の歴史、立地の特徴
1918年創業。大崎市古川に本拠を構え、鳴瀬川水系の豊富な水源と、東北の中でも寒冷な気候を活かした酒造りを続けてきました。周囲には平坦な穀倉地帯が広がり、古くから稲作が盛ん。戦後は高度経済成長期とともに地元向けの清酒需要を担ってきましたが、2001年以降、ブランドの見直しとプレミアム酒への転換に着手。現在は「宮寒梅」シリーズを核に、全国の特約店流通を拡大しています。
独自の酒造りへのこだわり
- 全量自社栽培米・契約栽培米使用:寒梅酒造は自社田での酒米栽培を行い、「原料から酒まで一貫管理」の体制を構築。地元農家との密接な連携で、酒米の質と個性を追求。
- 温度管理された冷蔵貯蔵庫と最新設備:発酵管理や貯蔵工程に徹底した温度管理を行い、常に安定した品質を保つ。
- テロワールへの志向:地元・大崎の自然風土を生かした“地域に根ざした酒造り”を推進。
- 低アルコールでも味の幅がある設計:13〜15度の軽やかな酒質でも、米の旨味と立体感を意識したバランス設計。
プレミアム日本酒の展開(3銘柄)
1. 宮寒梅 純米大吟醸 醇麗純香
- 受賞歴:Kura Master 2023 プラチナ賞/SAKE COMPETITION 純米大吟醸部門 上位入賞
- テイスティングコメント:華やかな白桃とメロンの香り。口に含むと非常に滑らかで、しっとりとした米の甘味とともに、キメ細かい酸が骨格を形成。余韻は上品で清らか。
- ペアリング:登米産森林鶏のたたき柚子胡椒添え。やわらかな肉質に、酒の酸と香りが清涼感を加える。
2. 宮寒梅 EXTRACLASS 純米大吟醸
- 受賞歴:IWC(International Wine Challenge)SAKE部門 Gold Medal(2022)
- テイスティングコメント:しっとりとしたバニラとナッツ香、滑らかでミルキーな口当たり。奥行きのある米の旨味としっかりとした後味の余韻が秀逸。
- ペアリング:仙台黒毛和牛の炙り握り。とろける脂と酒のまろみが絶妙に融合。
3. 宮寒梅 純米大吟醸 至粋
- 受賞歴:全国新酒鑑評会 金賞(複数年受賞)
- テイスティングコメント:洋梨や白い花を思わせる上立ち香。しなやかでシルキーな舌触りと清涼感が魅力。
- ペアリング:三陸産帆立とレモンのカルパッチョ。海の旨みと酸が調和。
レギュラー日本酒の展開(5銘柄)
1. 宮寒梅 純米吟醸45
- 受賞歴:SAKE COMPETITION 純米吟醸部門 入賞
- テイスティングコメント:青リンゴのような香りと柔らかい米の甘み。飲み飽きしない中庸なバランス。
- ペアリング:大崎産せりのおひたし。酒の香味と青野菜のほろ苦さが美しい調和。
2. 宮寒梅 純米酒 ひやおろし
- テイスティングコメント:ひと夏寝かせた柔らかさと旨味の重なり。落ち着いた香味設計。
- ペアリング:地元野菜と鶏つくねの鍋。温かい料理と酒の丸さが心地よい。
3. 宮寒梅 純米吟醸 まなむすめ
- テイスティングコメント:宮城県産まなむすめを使った酒。甘味と酸のバランスがよく、冷酒に最適。
- ペアリング:鳴子の温泉豆腐と海苔のサラダ。
4. 宮寒梅 うすにごり生原酒
- テイスティングコメント:もろみのニュアンスと微発泡のような爽快さがあり、ジューシーな旨味が広がる。
- ペアリング:塩釜港の戻り鰹のタタキ。にごりの乳酸感と相性抜群。
5. 宮寒梅 純米酒 おりがらみ
- テイスティングコメント:やさしい口当たりとほのかな米の甘み。軽やかで春先にぴったり。
- ペアリング:石巻産春キャベツの豚巻き。甘味と旨味の相乗。
使用している酒米の種類・味の傾向
- 主に使用:美山錦、山田錦、蔵の華、まなむすめ
- 美山錦:透明感とキレ
- 山田錦:ふくらみと骨格
- 蔵の華:宮城らしいやわらかい口当たり
- まなむすめ:穏やかな酸と旨味
- 自社栽培および契約農家による管理で高品質原料を安定供給
仕込み水・酵母などの特徴
- 水質:鳴瀬川水系の伏流水(軟水)。やさしく滑らかな酒質を実現。
- 酵母:宮城酵母・協会1801号など。香り穏やかで飲みやすい酒質に仕上げる設計が多い。
地元農家や地域との連携など
- 自社栽培田に加え、登米や大崎市内の若手農家との契約栽培を推進。
- 「稲作から醸造まで」の一貫したストーリーを発信。
- 子ども向け田植え体験や、大学生との連携プロジェクトも積極実施。
地元との連携・イベント事例
- 「蔵開き 宮寒梅の会」(毎年3月開催)
- 新酒試飲、蔵見学、ペアリングフードの屋台出店など。
- 「大崎SAKEテロワールフェア」(秋、地元飲食店と連携)
- 宮寒梅と地元食材を組み合わせたペアリングコースを町内複数店舗で展開。
飲食店や施設とのコラボ・ペアリングイベント
- 仙台の料理店「Graal」「和醸良酒○たけ」などと定期コラボ
- 春と秋に季節の酒とペアリングをテーマにイベントを実施。
- JR東日本「TOHOKU EMOTION」乗車体験との連携
- 特製純米大吟醸を車内限定で提供(不定期)
酒蔵の風景と訪問情報
見学の可否・直売所の有無
- 見学:完全予約制(10日前まで、最大10名)
- 直売所:敷地内に併設。限定品や試飲対応あり。
見どころ
- 木造の本蔵と冷蔵管理された新蔵の融合。四季折々の風景と溶け込む外観。
- 冬は仕込み作業の臨場感があり、春は周囲の田に水が張られ鏡のような風景に。
アクセス情報
- 住所:宮城県大崎市古川柏崎字境田15
- 最寄駅:JR古川駅(東北新幹線・陸羽東線)よりタクシーで約10分
- 車:東北道 古川ICより約15分
- 空港:仙台空港から車で約1時間
まとめ
寒梅酒造は、「米から酒へ」の一貫した酒造りを徹底し、蔵元・地域・飲み手の三者が“しあわせな一杯”を分かち合うことを理念に掲げています。精緻な造りとやさしい味わいで、今や全国にファンを持つ「宮寒梅」。土地の風土、季節の料理、人の手仕事が交錯する一杯を、ぜひ宮城の地で味わってみてください。