(山形県)
—「十四代」に込められた革新と継承の哲学—
酒蔵の魅力と実績
高木酒造は、「十四代」という名を全国に轟かせた革新的酒蔵でありながら、1615年創業という400年以上の歴史を持つ老舗。山形県村山市に位置し、伝統的な技術と現代的感性を融合させた酒造りで、日本酒ファンを魅了し続けている。プレミアム日本酒ブームの火付け役としても知られ、「日本酒の概念を変えた」と称される革新の担い手でもある。
歴史と立地の特徴
創業は元和元年(1615年)。代々「高木徳右衛門」の名を継ぎながら酒造りを続けてきた。現蔵元・高木顕統氏は15代目であり、十四代の名は「十四代徳右衛門」から命名されたもの。山形盆地に位置する村山市は、昼夜の寒暖差が大きく、清冽な水と酒米栽培に適した気候に恵まれている。
独自の酒造りへのこだわり
設備・製法・哲学
高木酒造の最大の特徴は、徹底した少量・高品質生産。最新の温度管理設備と、蔵人の手仕事を組み合わせた“精密な手造り”を実現している。
特筆すべきは酵母の開発力と、原料米へのこだわりで、自社開発した「酒未来」などを積極的に用い、新しい味の地平を切り拓いている。
プレミアム日本酒の展開(3銘柄)
『十四代 純米大吟醸 龍の落とし子』
- 受賞歴:IWC(International Wine Challenge)SAKE部門受賞歴あり
- テイスティングコメント:芳醇で華やかな吟醸香、極めて滑らかで綺麗な甘みと余韻。米の旨味を残しながらも雑味が皆無。
- ペアリング:山形牛の炙り寿司、庄内浜の赤貝、赤ワインソースで仕上げた山ぶどうと鴨のロースト。
『十四代 吟撰』
- 受賞歴:SAKE COMPETITION 上位入賞常連
- テイスティングコメント:バナナや洋梨様の香り、口当たりは軽快だが芯のある旨味が立体的に広がる。
- ペアリング:出羽鶴の煮こごり、わらびのおひたし、きのこのクリーム煮と。
『十四代 七垂二十貫(限定流通)』
- 受賞歴:数量限定ながら愛好家の間で最高峰と称される逸品
- テイスティングコメント:透明感のある甘旨の極み。まるで熟した果実のような完熟感と気品がある。
- ペアリング:真鯛の昆布締め、山菜の天ぷらと柑橘塩、洋梨とマスカルポーネの前菜。
レギュラー日本酒の展開(5銘柄)
『十四代 中取り純米』
- 香り:ほのかな青りんご系の吟醸香
- 味わい:柔らかく軽快。後味に清らかなキレ。
- ペアリング:山形の板そば、鯉の甘煮、ダシ香る芋煮。
『十四代 本丸(秘伝玉返し)』
- 香り:抑えめながら米のニュアンスが感じられる
- 味わい:旨味が濃厚で力強いが、スムースに喉を通る。
- ペアリング:米沢牛のすき焼き、玉こんにゃく、焼きナスのおろしがけ。
『十四代 純米吟醸 酒未来』
- 香り:ライチや白桃のような甘い果実香
- 味わい:酸と甘のバランスが秀逸。繊細で持続力のある余韻。
- ペアリング:だだちゃ豆のペーストを添えた白身魚のカルパッチョ。
『十四代 吟醸 播州山田錦』
- 香り:シャープな吟醸香と青竹のような清涼感
- 味わい:キレのある淡麗辛口。
- ペアリング:しじみの酒蒸し、山形だし豆腐、胡麻和え。
『十四代 特別純米 本生』
- 香り:新鮮なメロンやバナナの香り
- 味わい:ジューシーで若々しい酸が印象的。
- ペアリング:季節の山菜と海老のかき揚げ、カブの甘酢漬け。
使用している酒米の種類・味の傾向
- 主な使用米:山田錦、酒未来、龍の落とし子、美山錦、出羽燦々など
- 味の傾向:華やかな香りと甘みを主体に、クリアで品のある酸が特徴。どの銘柄も「旨甘口」系のバランス型で、余韻に高貴さがある。
仕込み水・酵母などの特徴
- 仕込み水:朝日連峰からの伏流水。超軟水であり、丸みのある味を形成。
- 酵母:協会酵母、山形酵母をベースに、蔵独自の調整を加えている。香り系酵母の使用が多い。
地元農家や地域との連携など
- 自社栽培および契約農家による「酒未来」「龍の落とし子」の生産支援
- 地域雇用の創出とともに、次世代の杜氏育成にも注力している
- 酒造期には地元高校生の蔵見学を受け入れる教育活動も実施
地元との連携・イベント事例
- 村山市主催の「十四代の会」限定ペアリングイベント(毎年2月)
- 山形空港×高木酒造「地酒テイスティングフェア」参加(例年秋開催)
- オンライン利き酒イベントも試験的に導入(2024年冬)
酒蔵の風景と訪問情報
見学の可否・直売所の有無
- 見学:原則非公開(要事前交渉/業界関係者のみ可)
- 直売所:なし(特約店販売のみ)
見どころ
- 重要文化財級の母屋と、石畳の蔵通りが美しい
- 冬の雪景色と瓦屋根とのコントラストが見事
アクセス情報
- 住所:山形県村山市大字富並1826
- 最寄駅:JR奥羽本線「村山駅」から車で約7分
- 車:山形市内から約40分
- 空港:山形空港から車で約20分
まとめ
高木酒造は、古き良き日本酒文化を守りながらも、時代の一歩先を行く感性で世界のSAKEシーンに新風を吹き込む存在です。伝統と革新の絶妙な融合、地域との連携、多様な味わいの表現力—すべてが「十四代」の一杯に凝縮されています。訪問は容易ではないものの、その酒に触れるだけで、この蔵の哲学と矜持を感じることができるでしょう。
